聞こえない音(超音波)のパワー
人(西洋人)が聞こえていると認識のできる音の範囲(可聴域)は20Hz~2万Hzです。
日本人はもっと高い音域まで聞こえ、10万Hzまで聞こえていると言われているほどです。西洋人に鈴虫の音色を聴かせると雑音に聞こえるそうですが、日本人には癒しの音でしかありません。
20Hz以下の人が聞くことができない音を低周波といい、2万Hz以上の聞くことができない音を高周波といいます。
その高周波、低周波の音は、海の波音、鳥のさえずり、滝のしぶきの音など、自然界にはたくさん存在します。その意識的には聞こえていない音が、体に大きな影響を及ぼすことが分かっています。
しかし現代の社会では、常に自然いっぱいの環境の中にいるというのは簡単なことではありません。コンクリートに囲まれ、人間の生体機能を乱す電磁波の飛び交う中で暮らさざるを得ないのが現実です。その体に受けるストレスは年々増えていて、健康に影響を及ぼしています。
そこですぐに大自然の中に引っ越すなどということは現実的ではありません。
動物の可聴域
イヌ | 15 Hz ~ 500 kHz |
ネコ | 60 Hz ~ 650 kHz |
イルカ | 150 Hz ~ 1500 kHz |
コウモリ | 1 kHz ~ 120 kHz |
倍音効果の大きい楽器
ヒーリングや医療に使われる音叉や、鐘楼、チベタンボウルやティンシャ、バイオリンなどは、「倍音」と呼ばれる、倍の周波数と共鳴し増幅する作用で深く響き渡ります。倍音の効果により人の聞こえない周波数を発生させます。聞こえないといっても、意識的に認識できないだけで、実際には体は振動を認識し、可聴域の音の癒し効果とともに、超音波によりさらに癒されています。
倍音をテレビやオーディオのスピーカーで聞くのは効果があるかどうかということですが、完全な倍音効果は得られません。商業上の理由で、オーディオから再生される音は可聴域に限られているからです。
楽器の周波数の例を挙げると、ピアノは1万1000Hzまで、バイオリンは9万Hzまで、笛は10万Hzまで出ます。一方、太鼓の周波数帯は低いです。
高周波と低周波の両方を含む音に癒し効果があります。フルートとピアノ、弦楽4重奏、パイプオルガン、オーケストラ、ガムラン、ひちりきと琴などです。ただし、これらの演奏を日々定期的に聞くことができるのは限られた人だけでしょう。
オルゴールの驚異的な音響スペクトル
オルゴールは、3.75Hzの超低周波から10万Hzの高周波をカバーする、特殊な楽器です。
この周波数は、通常大脳でとらえられる音とは違い、さらに奥の「脳幹」まで届くことが分かっています。脳幹や視床下部は、「生命を維持する器官」といわれ、バランスが大事な脳神経系・内分泌系・免疫系に影響を及ぼす重要な器官です。それで、そこに作用する音楽療法が研究されているわけです。
オルゴール療法は、低周波から高周波の音によって脳を刺激することで体を正常にします。副作用はありません。ホメオスタシー(恒常性)を取り戻すことによって心身を健康にコントロールします。
また、オルゴール療法により、体温の上昇、自律神経の正常化、脳梗塞の後遺症の改善、血流の改善、消化器系の活発化、副交感神経優位、糖尿の改善、電磁波過敏の症状の改善などの効果が出ています。
脳波の測定をすると、リラクゼーションが得られている(α波が多く出現)ことが分かっています。
β(ベータ)波 | 13~30Hz | 緊張、興奮により振動数が増えます。 |
α(アルファ)波 | 7~13Hz | リラクゼーションのときに出る脳波。 |
θ(シータ)波 | 4~7Hz | 居眠りのときに出る脳波。 |
δ(デルタ)波 | 0.5~4Hz | ノンレム状態。血圧や心拍も安定。 |
オルゴール療法に適したオルゴールは、シリンダー型だと72弁以上のものと言われています。
オルゴール別の周波数帯の分布
Disc型レジーナ・・・40kHz、65kHz、95kHzとピークがあり、100kHz付近まで存在しています。
スイス製シリンダー型・・・50kHzまで高周波がかなり多く存在。
クワイヤチャイム・・・2.75kHzに大きなピーク。高周波はほとんど存在していません。
オルゴールの歴史
「オルゴール」は和製英語で、「ORGEL」が訛って日本語化したものです。
オルゴールの原点は、14世紀のオランダで「カリヨン」と呼ばれた、教会の鐘で、紐を引いて鳴らすものでした。
ザルツブルグの市庁舎のカリヨンは、大きな塔の機械室にあるシリンダーのピンを毎月植え替えて曲を換えるそうです。
現在使われているオルゴールは、1796年にスイスのジュネーブで時計職人アントワーヌ・ファーブルが開発した「シリンダー型オルゴール」です。
オルゴールの音色はムーブメントの金属、ガラス、木の材質で決まります。キャビネットの材質はオーク材が好んで選ばれました。
1886年には、ドイツでディスク型が開発され、ディスクが自動的に選ばれるオートチェンジャーもできてきます。スイスで「ミラ」「ステラ」という名器や、音色の柔らかい「オルフェニオン」などが人気を博します。
その後、ディスク型開発者のポール・ロッホマンがアメリカに渡り、レジーナ社のオルゴール製作を指導して有名にします。
オルゴール療法に最適なオルゴールとは
スイス製シリンダー型72弁を、共鳴箱の上もしくは中に置いて使用します。
144弁のものはデシベルが高く、交感神経を優位にするために使用します。リュージュ社の「カーテル」やポーター社の「ディスク型オルゴール」は強い響きがあり、効果が高いです。
リラックス効果が高いのは、72弁です。
曲によっても効果は違い、「パッヘルベンのカノン」は気分を沈静化させ、逆に「アルビノーニのアダージオ」は気持ちをアップさせます。
現代の社会生活の中では、日中どうしても交感神経優位な時間が多い人の方が大多数なので、そういう人には、寝る前にも聞けてリラックス効果の高い、リュージュ社の72弁シリンダー型が適しているといえます。曲は、規則正しい和音や繰り返しの旋律で精神を落ち着ける「カノン」が効果が高いです。
また、ねじを巻き、だんだんテンポの緩くなるオルゴールは、「1/fゆらぎ」の効果もあり、さらにリラックス効果を高めてくれます。
自分に最適なオルゴールを選ぶために、できれば実際にオルゴール店に足を運び、自分と共鳴する、最も癒される「これだ!」というものに出会ってから決めるのがいいようです。
オルゴールの聞き方
顎、頬、耳、手などをオルゴールに直接つけ、振動を空気伝導と骨伝導の両方で聞く方法が、最も効果があります。
もしくは、痛みがある部分に当てたり、近くで聞くだけでも効果が期待できます。
オルゴールを聞きに行ってみよう
日本でオルゴールの第一人者、佐伯吉捷氏の主催するオルゴール療法研究所は、アンティークや現代のオルゴールを取り扱っており、オルゴール体験ができたり、スイスに発注して購入したりできます。
また、佐伯氏が主宰するスイスオルゴール友の会は全国で大小様々な規模のオルゴールコンサートを開催していて、そこでは普段聞けないアンティークオルゴールの圧巻の音色を聴くことができます。
参考文献:
